北米クリーンテック市場の潜在力【コラム】
原発事故の影響により、日本でもようやく自然エネルギーの活用に注目が集まり始めています。一方、アメリカでは2009年の「グリーンニューディール政策」によって、既に先進的な取組みが進んでいます。そしてそこには大きなビジネスチャンスが確約されているのです。 |
2009年オバマ政権によって打ち出された「グリーン・ニューディール政策」の正式名称は「American Recovery and Reinvestment Act of 2009」(通称:ARRA)と言い、エネルギーや通信のインフラを近代化し、エネルギーの海外依存度を下げようという一連の経済刺激策を指しています。総予算は7,872億ドル(1ドル80円で換算するとなんと約63兆円!)からなる大規模なもので、そのうちスマートグリッドの実証関連だけでも約35億ドルもの予算が割り当てられています。
このARRAが米国のクリーンテック市場の成長を後押しし、風力や太陽光といった再生可能な資源を生かした発電技術、スマートグリッド(次世代電力網)、住宅、ビル、新交通システム、さらには水や廃棄物処理までも含む一連の環境ビジネスへの投資が増加しています。
2011年1~3月期の米環境ベンチャーへの投資総額は前年同期比36%増の10億3810万ドルで、四半期ベースでは過去4番目の水準です。環境ビジネスが、ソフトウエアやバイオテクノロジーとならぶ主要な投資分野となりつつあります。
また、米国における環境政策は、実は各州政府の方が先進的な取組みを行っており、私共が日本事務所を務めるペンシルベニア州においても、2004年に代替エネルギー使用基準法案(Alternative Energy Portfolio Standard 、通称AEPS)が可決され、2020年までに自州エネルギーの18%を代替可能エネルギーで賄うことを義務付けました。そして既に、全米50州のうち29州が同様の再生可能エネルギー利用割合基準(Renewable Portfolio Standard、通称RPS)を採用しています。
これらの規制は電力会社に義務付けられ、未達成の場合は罰金を支払う必要があります。となると少々コスト高でも自然エネルギーを導入しなくてはならないインセンティブとして機能するのです。その結果、代替エネルギー発電の需要拡大と、それに付帯する次世代送電網や、発電装置を製造するための設備・部品等のサプライチェーンの需要拡大がほぼ約束されていると言っても過言ではないのです。
このことを聞いて「すごいバラマキだな!」と感動とするだけでなく、日本の製造業が強みを活かす大きなビジネスチャンスとご理解頂きたいと思います。需要は約束されている以上、後は競争に勝つだけです!
2011年9月
長谷川 靖志
長谷川 靖志