海外進出に現地公的支援制度を活用する【コラム】
弊社が日本投資事務所を運営しておりますペンシルベニア州政府の経済政策は、ターゲットとする産業を絞った極めて効率的なものです。そして、海外から進出する企業にとっても魅力的な制度がたくさんあります。その例として、下の3つをご紹介したいと思います。 |
1.ライフサイエンス・グリーンハウス
ペンシルベニア州は昔から製薬・バイオ等のライフサイエンス産業が盛んで、この産業をターゲットとした州政府出資のファンドである「ライフサイエンス・グリーンハウス」が、州内のフィラデルフィアを中心とした東部、ハリスバーグ及びステートカレッジを中心とした中部、ピッツバーグを中心とした西部にあります。
この3つのファンドの規模は合計で$100Million(約80億円)で、ベンチャー企業への出資により各地域でのライフサイエンスの産業クラスターが形成され、大きな経済効果を生んでいます。
2.ベンフランクリン・テクノロジーパートナーズ(BFTP)
BTTPは州政府が出資したベンチャーキャピタルで、先端産業による州内経済の発展を狙いとしており、上場や売却によるリターンを目的としていません。先端技術を持つ企業への出資に特化しており、州内各地域にある最先端の研究を行う大学とのネットワークを活用し、その他にも低コストでのオフィス提供や経営者のメンタルケア等、細かいフォローも行っています。
3.代替エネルギー産業向け助成プログラム
あまり知られていないことですが、ペンシルベニア州は太陽光発電産業において企業数と従業員数で全米第2位の州です(第1位はカリフォルニア州)。また風力発電に於いても、世界的なトップ企業の一つであるスペインのガメサ社の北米本社があり、それにより州内で風力関連の部品メーカーのサプライチェーンが確立しつつあります。
その背景には代替エネルギー・ポートフォリオ・スタンダードと呼ばれる法律があり、2021年までに州内で発電する電力のうち18%を代替エネルギーによるものとしなければならなくなったためです。また、既に全額使われてしまいましたが、500億円以上の助成金も投入されました。この政策により、この2~3年で州内の経済が活性化されています。
上記はペンシルベニア州の例ですが、米国の各州またそれぞれの国では経済活性化を目的とした助成プログラムが多数存在します。こういったプログラムは現地の企業だけでなく、外国から参入する企業に対しても活用できるものは多数あります。
しかし、ペンシルベニア州の実情をお伝えすると、残念ながら日本企業でこういった制度を活用しているところはいまだになく、大変もったいないといつも思っています。
海外市場参入を考える際には、現地の助成プログラムについても調べてみてはいかがですか?
髙山 恵史