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ポスト海外進出 進出後に売上が伸びない5つの原因【コラム】

Post market entry.png  今年に入って「海外市場に進出したけど思うように売上が伸びない」という日本企業の話を何件か聞きました。「売れない理由は現地の代理店が怠けているから?」「もっと良い代理店がいるのでは?」という認識の方が結構多いのですが、本当にそうなのでしょうか?

海外進出してみたものの・・・
 経済が停滞する日本市場に限界を感じ、急成長するアジア市場へ参入。知人の紹介で現地の代理店とビジネスを開始してみたものの売上は思うように伸びず、顧客は一部の現地日系企業だけで採算ラインに乗るまでの道のりは遥か遠く、その次の打ち手が見えない。代理店が真剣に取り組んでいないのではと疑念が生じたり、そもそも海外進出は自社にとって背伸びをし過ぎだったのではと後悔したりもする。そして新天地への幻想はもろくも崩れ落ちる。そんなケースが増えているようです。
 新市場での成功は一朝一夕では成し得ません。日本で売れている製品が日本と同じ価格でいきなり飛ぶように売れるというケースはほとんどないと思います。一部、例外的な成功事例は確かに存在しますが、基本的にはスタートから多くの課題を地道に、根気強く解決していくしか道はありません。進出後の1年やそこらで採算ベースにのるようなケースは多くはないということを理解し、腰を据えて取り組む必要があります。
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海外ビジネスの売上が伸びない5つの理由
 このように喜び勇んで海外進出したものの、なかなか売上が伸びないというケースはよくあることです。弊社のクライアントを含め、いろいろな企業のケースを分析してみると、概ね以下の5つの原因が上げられます。

1.進出先を間違える
  ・製造拠点として進出した先でついでに販売を開始するも売れない
  ・知人からまずは現地企業を紹介され、結果的に市場を選択してしまった
2.組む相手を間違える
  ・知人の紹介、WEBからの問合せ、展示会での出会い等に飛びついてしまった
  ・他の現地企業を知らないので、最適なパートナーかどうか常に疑念あり
3.日本と同じ製品を同じ価格のまま販売する
  ・日本の高性能な製品なので高くても売れるはずと思い込む
  ・目先の商談で短期的な出費を回収しようとして見積が高くなる
4.現地の代理店任せにする
  ・現地の代理店と契約すれば後は自動的に売れるものだと思っている
  ・売れない原因は代理店の姿勢や営業力にあると決めつける
5.仮説検証のPDCAサイクルがない
  ・需要をどう喚起するか、競合とどう差別化するか仮説がない
  ・とりあえず売ってみて、反応が悪いと思考停止してしまう
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マーケティング不在の販売活動の限界
 市場がどこであれ、マーケティング無しでいきなり販売してもだいたい売れません。マーケティングとは広告やプロモーションのことではなく、市場を分析して4P(製品、価格、流通、販促)を設計するという基本的な活動のことを指します。「マーケティング無しでも日本ではそれなりに売れている」と思われるかもしれませんが、それは過去からマーケティングを積み重ねてきた結果であり、マーケティングという言葉を使わなくても、お客様のニーズを聞き、競合製品を学び、製品の改良や売り方の工夫を続けてきた結果なのです。
 しかし、それは日本市場の日本企業を相手に積み重ねたものであり、それがそのまま異なる市場で機能するとは限りません。例えば産業機械を製造・販売している弊社クライアントが東南アジアの展示会にて、セッティングのために機械をテストランした際に「あれ?数ミリ誤差が出てる。まずいな。」と呟いたアウトプットを見た現地の代理店の営業に「Beautiful!」と言われ、クライアントのスタッフが顔を見合せて「え?これでいいの?日本では完全にアウトですよ。」と驚いていました。また、彼らは競合製品の仕上げのひどさと価格の安さを見て驚愕していました。このような市場で日本と同一製品を日本と同じ価格で販売してもまず売れません。このクライアントは中古機を安価で販売し、部材を軽量化してコストダウンしました。
 何が正しいか間違いかではなく、単純に顧客のニーズや競争状況は日本とは異なるのです。それを無視して日本流を代理店に押し付けて、後は放置しても結果が出るはずと考えるというのは傲慢過ぎると思います。全ての問題を現地の代理店のせいにする前に、もう少しマーケティングをちゃんとやってみてはいかがですか?

2016年5月
長谷川 靖志