中国市場の魅力
1978年の改革開放政策にて私有制と市場メカニズムを導入始めた結果、広東省や福建省などの華南地域を皮切りに、2001年のWTO加盟後に対外開放された長江デルタ地域や環渤海地域に外国資本の投資が急増、安価な労働力を見込み、これらの地域を労働集約型製品の輸出拠点と位置づけた外国企業が続々と進出しました。沿岸部地域を中心とした輸出と投資が経済成長の主なエンジンとなり、1980年から2013年の33年間の実質GDPの平均成長率は9.9%を記録、2010年にはドル換算の名目GDPで日本を追い抜き、米国に次ぐ世界第二位の経済規模になりました。
近年はその驚異的な経済成長に陰りが見え始めています。2015年の実質GDP成長率は6.9%で、25年ぶりの低い数値となりました。その状況を受けた習近平政権は、中国は高度成長期を終え、安定成長期のニューノーマル(新常態)に移行したとの認識を示し、新たな成長モデルを模索し始めています。実際は、日本のGDP成長率と比較すると、鈍化しつつあるとはいえ高い水準を維持しており、「爆買い」と言われるような極端な現象は一時的かもしれませんが、中間層の増加に伴う経済発展は継続すると思われます。
生産構造(%) | 就業構造(%) | |||||
第一次産業 | 第二次産業 | 第三次産業 | 第一次産業 | 第二次産業 | 第三次産業 | |
2007 | 11.3 | 50.0 | 39.7 | 40.8 | 26.8 | 32.4 |
2010 | 10.4 | 48.5 | 41.1 | 38.4 | 27.1 | 34.5 |
2015 | 7.4 | 46.8 | 45.8 | 33.8 | 27.1 | 39.1 |
2020 | 5.5 | 46.5 | 47.9 | 28.9 | 28.7 | 42.4 |
2030 | 3.2 | 45.4 | 51.4 | 20.6 | 31.2 | 48.3 |
*出展:内閣府 経済社会総合研究所
「世界の工場」と呼ばれるほど、工業製品の輸出を武器に急速な経済発展を遂げた中国は、2013年に貿易総額が初めて4兆ドルを突破し、米国を抜き世界最大の貿易国になりました。中国経済を牽引しているのは、繊維やアパレル、自動車や電気機械に代表される工業製品で、金額ベースでみると輸出総額の約95%を占めています。
しかし、近年では沿岸部の人件費高騰の影響もあり、付加価値の低い製品は、中国より生産コストの低いアジア諸国へ生産拠点移管の動きが続いています。また中国政府主導で、従来型の重工業や不動産を中心に過剰投資の抑制も進められており、工業中心の経済からサービス中心の経済への移行が始まり、世界の工場から世界の市場への転換がスタートしたと考えられます。
<自動車産業>
中国の基幹産業の一つであり、年間販売台数が2000万台以上で世界第一位の市場規模をほこっています。歴史的には1985年にフォルクスワーゲンと上海汽車の合弁会社設立をきっかけに続々と外資が参入し、中国の自動車産業は本格的な黎明期を迎えました。 2000年代に入ると驚異的な経済成長による所得水準向上やインフラ整備の本格化で、国内自動車需要が急増し、2009年には自動車生産台数と販売台数ともに世界一となりました。今後も成長は続くと見られ、中国汽車工業協会(CAAM)によると、中国の自動車販売台数は2015年には2500万台、そして2020年には約3000万台に達する見通しとなっています。 |
<ヘルスケア>
中国では65歳以上の人口が2億人を突破し、30年以上継続してきた一人っ子政策の影響もあり、今後も急速な高齢化が進むと言われています。中国政府は「高齢化の加速と医療設備の不足は、今後直面する大きな課題になる」と認識しており、急激な経済発展に伴う医療ニーズの高まりもあり、医療・介護業界は急激に成長してきていますが、今後も高い成長率を維持するものと考えられます。 例えば医薬品の市場規模は2007年から2013年で3倍ほどの成長を遂げており、更に政府は医薬品分野の規制緩和を進め、2015年には医薬品の価格上限を撤廃する等、市場競争を持ち込むことで高まる需要に応えようとしています。また、医療機器市場も成長しており、昨今では認証や通関の簡素化にも取り組んでいます。 |
<Eコマース>
中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)によると、中国のインターネットユーザー数は6.68億人、うちモバイルでの利用率は88.9%です。ユーザーの過半数である3.7億人がインラインショッピングの利用経験があり、1分間ごとに17万人がオンラインで購入しているというデータもあります。 主要なプレイヤーはタオバオとJD.comで、2015年11月11日シングルデーのプロモーション合戦は日本のメディアでも話題になりました。ちなみにアリババはこの1日だけで1.7兆円を売り上げました。日本の大手百貨店の1年分の売上を超える数字です。 中国では若者に趣味について質問すると「ショッピング」と回答する人が非常に多く、リアルの小売店チェーンの整備よりもオンラインが先行して普及しているという見方もあります。 |
90年代後半から2012年までは、中国進出と言えば製造拠点の移転や、顧客の移転に伴う追随がメインであり、工業団地の選定や法人登記の手続き、サプライチェーンの整備等が主な課題でしたが、現在の中国の人件費を考えると製造拠点として新たに選択されるという企業は少ないと思います。 今後、世界最大の中間層をターゲット市場として参入するというケースが増えるでしょう。その場合は、代理店の開拓や、消費者への市場調査やプロモーションが進出検討の第一歩となるでしょう。 |
<現地パートナーのご紹介>
中国におけるにおける弊社パートナーはアルグローリー・コンサルティング・サービスです。代表はアナベル・ロン氏で、2013年にアルグローリー社を設立し、ノースカロライナ州の貿易・投資促進業務を通じて米国企業の中国進出を多数サポートしてきた実績があります。 市場調査、参入戦略立案、代理店開拓、JV設立支援、貿易実務支援、展示会出展サポート等、中国参入時に必要な業務はほぼサポートすることが可能です。ヘルスケア、航空、自動車、産業機械、化学、代替エネルギー、食品業界等での経験が豊富、今までフォーチュン500のうちの30社を含む100社以上の中国参入をサポートしてきた実績があります。 |
<事例紹介>
・香港における日本食の販路開拓の事例はこちらを参照ください。
・中国における日本酒の販路開拓の事例はこちらを参照ください。
・中国への食品輸出サポートの事例はこちらを参照ください。
<関連コラム>
・成熟市場と成長市場における営業方法の違い
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